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異邦人/アルベール・カミュ

11 10, 2011
異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫)
(1954/09)
カミュ

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人を殺した理由は「太陽が眩しかったから」。
主人公ムルソーは、狂人でも何でもなく、ただあるがままに取繕うことなく、現実を認識していく。ムルソーは嘘はつかない。ただ淡々とあるがままを受け止め、あるがままを認識していく。引き金をひいたが故に異邦人として裁かれるムルソーにとって、社会とは人とは、神とは、そして死はいかなる存在たるのか。

親殺し、神、死。
それはカラマーゾフの兄弟を思い起こさせるキーワード。
(まぁキリスト国家において切り離せない事物なのでしょうが...)

古典が古典たりえる理由がそこにあります。
本人のまわりで世界は動き、本人の意識を置いて、本人の関わる世界が変わっていく。
ここでいう本人とは、ワタシなのかムルソーなのか、はたまた貴方なのか。

死刑を宣告されたムルソーは死を見つめる。
与えられる死とは何なのか。死は我々にとっていかなる存在なのか。

認識の面白さ。世界に馴染むことができる人と異邦人との境界線は、浅く薄い。
我々の世界観は実に狭少ではないか。

何度読んでも面白い一冊。実に名作。
これは読む人によって、異なる感慨を与えることになるのでしょう。

雪の夜話/浅倉 卓弥

11 10, 2011
雪の夜話 (中公文庫)雪の夜話 (中公文庫)
(2007/10)
浅倉 卓弥

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白い雪夜に出会った少女。少女と出会った少年は青年となり、社会人となるが、ある欠落を抱えて、また少女に出会う。

浅倉さんの作品は、「四日間の奇蹟」や「君に名残を」を読んで期待を込めて読みましたが、作家と名乗るにもイマイチな一冊。ファンタジックに始まり、主人公である相模和樹の社会人としての話。ここまでは読めますが、のちに続く、薄っぺらい哲学話にはがっくりでした。

 言葉は常に事象の外側にあった。どれほど忠実に紡ごうとしてもそれが事物と一体になることは決してない。たとえその対象が僕がよく知る、むしろ僕しか知らないはずの僕自身だったとしてもだ。
 わかったでしょう? だけどそれしかできないのよ。だから貴方が貴方を知ろうとする努力には初めから限界があるの。P.171



この一節だけでも、薄っぺらくて苦痛極まりない。
もっと事物を明確に「自我」と意識や集合無意識を結び合わせるところまで持っていってくれると面白かったのにと思うけれど、まるで中学生が書いたような作品なので、それも望めず。

この作品が生まれた高校生のあたりなら、面白く読めたかもしれません。
前作品「君に名残を」が清々しい文章に切ない物語を紡いだ作品だっただけに落胆も大きかった一作。

君の名残を君の名残を
(2004/06/15)
浅倉 卓弥

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切ない歴史物小説。
戦国時代を生きる2人の切なさは、浅倉さんだからこそ描けた世界だと思います。

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)四日間の奇蹟 (宝島社文庫)
(2004/01)
浅倉 卓弥

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最後の光景には胸を締め付けられます。

永遠の0/百田 尚樹

10 29, 2011
永遠の0 (講談社文庫)永遠の0 (講談社文庫)
(2009/07/15)
百田 尚樹

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上司が貸してくれた1冊。
解説を入れて589頁と、文庫本にしては分厚い1冊ですが、久しぶりに時間を忘れて読みふけりました。

主人公の健太郎と姉の慶子は、祖母の死をきっかけに祖父が実の祖父でないことを知る。実の祖父が特攻で亡くなったことを知り、ライターの姉は健太郎に調査を依頼する。実の祖父である宮部久蔵を知る人物は、宮部が臆病者であったと語る。死にたくない、と口にする宮部は招集された身でなく、志願兵であった。それも一流の飛行機乗りであり、そんな宮部はなぜ戦っていたのか、生きたかったのか、特攻に散っていったのか。

正直なところ、戦時物の小説と分かっていたら読まなかったかもしれない。特に明治以降の時事問題は苦手で、読んだことのある作品は「二十四の瞳」や「黒い雨」など数える程度。しかし、本作を読んで悔いることはありませんでした。戦時中の話になると、現代と価値観の相違が生まれ、価値観をすり寄せると押しつけがましく、頑固に現代の価値観を突き進ませるとファンタジーと化す。本作が押しつけがましくないのは、本作の視点が現代を生きる人びとが当時を振り返って語っているからなのかもしれません。

いろんな人びとの取材を重ねていくうちに真実が甲斐見えてきます。

まさかこれがデビュー作とは信じられない出来。
ところどころ、人物がステレオタイプで作りが甘い箇所はありますが、本筋がすっきりとしており、興味深く読み進むことができます。

黒い雨 (新潮文庫)黒い雨 (新潮文庫)
(1970/06/29)
井伏 鱒二

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二十四の瞳 (角川文庫)二十四の瞳 (角川文庫)
(2007/06)
壺井 栄

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小中学生に読んで以来、触れていない作品。
そろそろ再読しようかな。

華氏451度/レイ ブラッドベリ

10 18, 2011
華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)
(2008/11)
レイ ブラッドベリ

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華氏451度、それは紙が自然発火を起こす温度。
舞台は未来。その社会において本の所有が規制されていた。
書物は薬物であり、所有すら罪であった。

主人公モンターグは、本を焼く【焚書官】を仕事とする。

モンターグの上司ビーティはいう。

「みんながみんが、幸福になりたがるのは当然のことだ。そして事実、だれもが幸福にくらしている。しかし、それはおれたち焚書の仕事を受けもってるものが、そのようにはからってやっているからなんだぜ。おれたち焚書官は、人類に愉しみをあたえている。人類の生き甲斐をだ。享楽を、刺激を、おれたちの文明社会が、それを人類に、ふんだんにあてがっていることは、きにとしてもみとめんわけじゃあるまい」P.127



人びとは、テレビ室の<家族>と時を楽しむ。
考える必要はない、思索という言葉は消えうせる。
これが1953年に生まれた作品だというのか。

享楽的に暮らす道具はすべて揃っている。
テレビ室の<家族>と楽しく過ごす家もあり、妻がおり、仕事もある。

しかし、モンターグは次第に自らの職分に疑問を抱き、ひっそりと隠れて暮らす元大学教授フェイバーのもとを訪ねる。

「ぼくたちが幸福でいられるために必要なものは、ひとつとして欠いていません。それでいて、ちっとも幸福になれずにいます。それには、なにかが欠けているのにちがいありません。考えてみますに、ぼくたちの手からなくなったものといえば、この10年か12年のあいだ、ぼくたちの手で焼きつづけてきた書物だけです。そこで、考えました。この不満を補ってくれるのは書物ではないかと」
 フェイバーは、こたえて、
「あんたもロマンチックなおかただな。それも...(後略)P.176



深く考えることを禁じられ、本が存在しない世界。

液晶のなかの<テレビ>の家族に夢中な彼らと
パソコンに夢中になり、バラエティばかり放送するテレビを鑑賞する私たち。
そこに、いかほどの違いがあるというのだろう。

突飛な設定のようでいて、私たちの背後から迫ってくるそれは、
さすがSF作家 レイ・ブラッドベリの手腕だと感服しきりでした。

チョコレートコスモス/恩田 陸

09 23, 2011
チョコレートコスモス (角川文庫)チョコレートコスモス (角川文庫)
(2011/06/23)
恩田 陸

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恩田さんのファンタジックな世界に染まりたくて買った1冊。

 幼いころから芸能一家として育ってきた今をときめく女優の響子は、女優2人が行う壮大な演劇のオーディションに呼ばれもしない。同じ舞台に立っていた、あおいはアイドルでありながらオーディションに呼ばれ、演劇界で台頭してきた幼馴染まで、そのオーディションに参加している。そこへ飛び込んだ響子が見たものとは。

 俳優や劇団にかかわる人びとが、あるオーディションに集結していく。人物の視点が変わるたびに、関わりのない人びとは、どう繋がっていくのか不思議に思っていましたが、オーディションでそれぞれの立場で関わりを持ちながら、影響を受けていく姿が面白かったです。それぞれの視点を見てきたからこそ、それぞれの「想い」が読者にも幾重にもなって迫ってきます。

 佐々木飛鳥という大学1年生の子が、天才として(しかし本人は自覚、いや自意識すらない)響子と驚くべき共演をする。時間を忘れてのめりこんでしまうほどの光景でした。

 本という虚構のなかで、さらに演劇という虚構が繰り広げられる面白さに酔いながら、久々に飽きを感じず完読しました。オーディションで使われるサキの「開いた窓」や、ヴィヴィアン・リー主演の「欲望という名の電車」は、また名作であるだけに良い味を出していました。

欲望という名の電車 [DVD] FRT-140欲望という名の電車 [DVD] FRT-140
(2006/12/14)
ニック・デニス/ルディ・ボンド/カール・マルデン/ヴィヴィアン・リー/キム・ハンター/マーロン・ブランド

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サキの「開いた窓」は2ページほどのショートストーリーなので、原作でも簡単に読むことが出来ます。原語で読むほうが恐ろしさとブラックユーモアが響いてきます。
Collected Short Stories of Saki (Wordsworth Classics)Collected Short Stories of Saki (Wordsworth Classics)
(1999/12)
Hugh Munroe Munro

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プロフィール

Author:はるトマト
教養を高める読書でありたい。
哲学科専攻の22才女子

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